ソウルを14:30に飛び立ち、上海で乗り換えして成都に到着するのは21:00の予定。ぼくは腹痛でトイレに2回駆け込み、予定時刻15分前に搭乗できたが、ゲートで待ち合わせた彼女はまだ来ない。最後の搭乗者となった彼女には携帯に電話がかかってきたらしい。中国東方航空の機内は2列3列2列のジャンボで、スペースもLCCよりすこしばかりゆったりしていた。機内食はご覧の通り、フライドチキンが乗ったチャーハン、パサパサのパンとマーガリン、なぜかコチュジャン、スモークチキンとポテトサラダ、パウンドケーキ、オレンジジュースだった。飲み物はペットボトルの水しかない。機は淀んだ空気の中国上空を1時間半ほどかけて舐めるように飛んでいた。地球の規模からすると、ジェットエンジンが火を噴く旅客機などミクロなハエが地面すれすれを飛び回っているようだ。軽い食事で満たされたぼく達は、薄っすら眠りながら、何年ぶりかの上海浦東空港に着陸した。

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  10年以上前の日本企業上海工場設立ブームの時は、スーツにネクタイして出張で何度も足を運んだものだ。しかし今回は上海の街には降りない。国際線から国内線に乗り換えるだけだ。1時間以上待たされた昔の混雑を避けて広くなった上海空港の入国審査は、昔のように入国する外国人は多くなくなったように思える。そして、ほとんど待たずに審査できた気がする。そして、17:00発予定の成都行きMU5038便は、2時間遅れ。御飯時だったので弁当が配られた。今回発の中国料理は、焦げ目のない薄く焼かれて醤油で味付けされた卵と、トロトロに醤油で煮込まれた手羽元、鶏ガラスープで炒めたキャベツと白飯。彼女のは卵の代わりに、骨付豚の角煮。全部茶色くて見た目は悪いが、味はよかった。上海空港の国内線には外国人は殆どいなくて、ゲート前のバスターミナルの待合室のような場所は人で溢れていた。20:00を過ぎても、飛行機は遅れたままだ。アイフォーンは充電できるが、空港の無料Wi-Fiを利用するには国内番号SMSの承認が必要のようで、全く繋がらない。気がついたのはコカコーラが安く自販機で買えること。330mlで3元約50円。500mlのサントリー烏龍茶は6元で100円ほど。中華茶は4元で63円ほど。今からフライトしても着くのは0時過ぎる。宿ままでのバスはあるのだろうか。

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 何年か前にも成都に来たが、夜に到着して乗り換えの待ち時間が12時間ほどあったので、バスで中心に出てみたのを覚えている。小雨が降る中街を彷徨ったが夜遅くて営業している店がなく、マクドナルドで時間を潰し、両替もできずにタクシーで空港まで帰ったのだった。

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4時間ほど中国東方航空の飛行機の遅れを待って、皆が痺れを切らして苦情を言いだす頃、搭乗が開始されたのは夜の9時だった。空港の端っこに停められた飛行機までバスに揺られて、3列3列の小さな機に乗り込んだ。離陸して間もなく運ばれてきた夜食は、小さなアルミの容器に入った、塩味が全く効いてない豚角煮ご飯かブヨブヨに伸びたミートソースのスパゲティが選べ、スナックが入った箱。彼女が不味かて食べれないのでぼくが二つとも食べていると、ぼく達の列の通路側に座っていた大学生の中国人の男が日本語で「日本の方ですか？」と話しかけてきた。彼は四国の大学に行っているようで、成都に里帰りするらしかった。「成都は辛い料理が多いし、泥棒も多いから気をつけて下さい」と丁寧な日本語でアドバイスしてくれた。

ぼくは微睡んだ状態で、機が着陸する衝撃で目が覚めた。疲れた体を引きずって、長くて広い成都双竜空港を歩いて出口に向かった。時刻は0:15だった。体は疲れているが、もう一踏ん張りで予約していた宿で寝そべることができる。飛行機の中で話しかけてきた彼は、この時間にはバスがないと言っていたが、空港は遅い時間にもかかわらず混雑していて、1人10元約150円のシャトルバスは運行していた。バスは満員で発車し、成都の中心地でぼく達を下ろした。数年前と変わらず、降りた場所には、トゥクトゥクのような電動三輪バイクの客引きに群がられ、それを振り切って、タクシーに乗り込んだ。10分ほど走って宿の近くで全く英語が通じないドライバーに降ろしてもらい10元払った。成都のタクシーの初乗りは9元で2キロが含まれている。そして2キロ毎に2元追加される。宿まで2キロ無かったようだが、深夜料金だったのだろう。予約していたLazy Bones Youth Hostelという宿に着くと、真っ暗でドアは開かない。ドアの横にベルがあったので、連打していると、暗いレセプションカウンターの隣で寝ていたおじさんが、ゆっくり起きてドアを開けてくれた。予約ページには24時間チェックインできると書いてあったが、なんとかできた。おじしんは、若い英語が堪能な男性を呼んでくれて、チェックインをしようとしたが、予約に名前がないらしい。どうやらこの宿はもう一つ同じ名前で別の場所にあってそちらを予約したらしい。そこからは2キロほどあるし、また寝るのが遅くなるので、一泊だけ、この宿に泊まることにした。もう一つの宿の予約はキャンセルできるらしい。ロッカーの鍵を渡された部屋はドミトリー(タコ部屋)だったが、部屋の中はいい匂いがして、エアコンが効いていた。外は湿度100％あるような蒸し暑さだったので、部屋は快適だ。音を立てないように、携帯のライトで荷を解き、とりあえず歯も磨かずにカーテン付きのベッドに横になると、一瞬で深い眠りに落ちていった。