ラオスの首都であるビエンチャンは、メコン川を挟んでタイ東部の国境の街ノーンカーイと隣り合わせであり、ビザラン(ビザ免除期間がすぎると隣接する国外へ一旦出国して、ビザ免除期間をリセットすること)の規制が激しい東南アジアの国の中ではラオスは唯一、ビザランが可能な国だろう。しかも、首都であるビエンチャンは国境添いにあるので、バスで気軽にノーンカーイにビザランしに行けることになる。
そして自分にとって、ビエンチャンは2度目の訪問になるが、前回訪れたのは4年ほど前であり、ほとんど街は変わっていないように感じた。そして今回は初めての原付バイクでの南から陸路での報恩となり、自転車を借りる必要もなく行動範囲が広がることで楽しみが増えたのだ。しかし、バイクで街を一周してみたのだが、それほど大きな街ではない。バンコクやハノイのような猥雑さや混沌さはなくて、のんびりしている雰囲気なのが好きだ。
ラオスのビエンチャンといえば、昔は「置き屋」と呼ばれる売春宿が有名で、質が高くて安いということで、50〜60代の置き屋目当ての日本人中年男性がチラホラ街を歩いている。ぜひHIVにでも感染してほしい。
Funky Monkey Hostel
Booking.comで予約しておいた、ベトナム人家族が経営している安宿「ファンキー・モンキー・ホステル」は、最もアクセスの良い場所にあり、若くて無愛想な若旦那が印象的だった。李小龍のような顔立ちで小柄な彼に怒られたことがあった。ドミトリーで同じ部屋だったカリフォルニアから来た50代くらいのウィリアムは、トミー・チョンとハーヴェイ・カイテルを足してホームレスにしたような、ファンキー・モンキーなおじさんで、すぐに意気投合した。アメリカ南部の英語はよく理解できなかったが、自分の部屋のバルコニーに連れて行き、水の入っていないバンブーボングをエアコンの室外機の裏から取り出し、おもむろにウィードを詰めて、火をつけて吸って激しくむせていた。そして我々は違法の契りを交わした「友」となった。
「なぜボングに水を入れないのだ?」と聞くと彼は「水を入れると臭くなる」ということだった。なるほど。
なぜ、若旦那から怒られたかというと、調子に乗ってハイになった宿泊客が売春婦らしき女性を2人ドミトリーに酔っ払って連れてきて騒いでいた。自分は階段で電話をしていて、あっけにとられて見ていた。すると若旦那がすごい形相で階段を登ってきて、その辺りにいた自分も含めて怒鳴り上げていた。「ゲストハウスに売春婦をつれこむなんて今までに無い!」と言ってた。
(写真はラオスの代表料理、青パパイヤのサラダ「ソムタム」と蒸したもち米の「カオニャオ」。セットで300円くらい)
ビエンチャンのメコン川沿いで大麻を吸っていると警官らしき人にカツアゲされる
宿で仲良くなった北欧人の男の子と、ナイトマーケットに行き、スモーカーから、くれぐれも「川沿いでジョイントを吸うな!」と言われていたのにも関わらず、メコン河の川べりの階段でジョイントに火をつけた。
なぜなら、私には「秘策」があったからである。そして、ラオスの留置所に非常に興味があったからである。
留置所といえば、タダ飯タダ宿なのは当たり前。違う角度から見れば、自由はないものの、飯付きのゲストハウスとも言えるだろう。
その裕福ではない東南アジアの国の、タダ宿の佇まいや雰囲気、汚さは想像を絶するものと思われ、外国人は絶対に金を払ってでも許してもらいたいと思うだろう。
そんな最悪な状況の留置所内部を取材できるとなれば、メディアの取材班は金を払ってでも泊めてもらいたいという考え方もできるし、留置所でさえエアコン完備、美味しい料理付き、自分の部屋の布団よりも分厚い布団つきという先進国に住んでいる庶民は、どれだけ酷い監獄なのか興味があるだろう。
この考え方こそ、「秘策」に繋がるわけなのだが、それでは次に「秘策」をお教えしよう。
この「秘策」は、見逃してもらうための賄賂を要求する警官がいる国であれば、タイでもカンボジアでもベトナムでもインドでも通用するのではないかと思われる。ということは我が国では絶対に通用しない。
私たちがジョイントを回し吸いしていると、そのジョイントが半分も残らないうちに「警官」と言いながら身分証をチラリと見せる、2人の私服の男性が近づいてきた。
彼らは私服であり、警官と言いつつ首から下げて胸ポケットに収めている身分証を改めさせてもらうこともできるが、制服を着ていないことが疑わしい。
北欧人の彼はとっさに手に持っていたジョイントを体の後ろにさりげなく隠したが、その警官と言う1人の男は「それは何だ?」と言って、隠したジョイントを取り上げた。
北欧人の彼は明らかに動揺して、顔が真っ青になっていた。
警官と言う彼は、取り上げたジョイントの匂いを嗅ぎ、「これはマリファナだな」「マリファナはラオスでは法律で禁止されている」というような事を言ってくる。そして、「罰金200ドル払えば見逃してやろう」という風な事を英語で言っていたのだろう。
私はおもむろに携帯電話を取り出し、「何?いくら払えば見逃してもらえる?何のために?」と聞き返した。
そう、彼らは明らかに彼らの法律でも違法である「賄賂」を要求したことになり、その証拠を握られれば懲戒免職(本物の警官であれば)どころか、自分たちが監獄へ行くこととなる。
私たちは肌身離さず、その証拠を録音・録画・撮影できる端末を所持しているのだ。
そして、動揺し始めた彼らに何度か同じ内容を聞き返したのち、彼らに向けて写真を撮影しようとすると、彼らは一目散に逃げていった。
そして北欧人の彼に種明かしすると、「もうダメかと思った・・・200ドルで済むなら払おうと思った・・・なるほど君はすごい」と言っていた。
この「秘策」で重要なのは、「ビビった方が負け」なのである。私には「留置所へ連行されても構わない。むしろ連行されたい」という余裕があったので通用した技なのであり、カツアゲしようとする輩は相手の動揺や怖気付き方を察知して強気に出るのだ。土下座して涙して命乞いしようものなら、その要求額は更に跳ね上がるだろう。下手をすればクレジットカードで大金を借り入れさせるかもしれない。
今回、残念ながら留置所の取材はできなかったが、次回は是非とも「国営ゲストハウス」へ宿泊してみたい。これは予想なのだが、犯罪の多い国では軽犯罪で留置所に(日本では約1ヶ月間の取り調べののち、仮釈放)長期間留めておくこともできないのではないだろうか。留置所内でも釈放というエサをチラつかせて看守が賄賂を要求してきそうだし、罰金という名目で金を巻き上げようとするだろう。軽犯罪者で留置所が溢れかえってしまうと予想される拘留期間は、3日が限度だと思われるが、その真相を確かめたい。
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