ミャンマー南部ヒッチハイク プロトントン島からボッピンまで

硬くて冷たい床に張ったテントで目覚めた私は朝7時に起き、荷物をまとめて旅立つ事にした。海で泳ぎたい気もしたが、疲れるしシャワーが面倒だった。浜から少し歩いた小さな商店でチョコレート牛乳とジャムパンを買い、小さな子供用のテーブルで朝食を食べた。犬が寄ってきて恐る恐る近づき、撫でてやると気持ち良さげだ。

更に歩くと、このプロトントン島の中心地らしき市場がある交差点に出た。活気があり、角のコーヒー屋に入りコーヒーを注文。揚げパンと油ぎったドーナツに甘い餡子が入ったものを食べたが、コーヒーさえ甘すぎて油と砂糖で気持ち悪くなる。

市場には小さな魚と新鮮なイカが売られていて美味しそうだった。街を抜けるとすぐにバイクの後ろに乗せてくれる人が見つかり、素早く橋を渡り、交差点へたどり着いた。

そこから北へ向けてヒッチハイクの始まりだ。ザックを背負って木陰に立ち、手を振って乗せてくれアピールをすると、街から離れるに従って成功率が高くなる。主にバイクだが、いやバイクしか通らないのでバイクになる。そして短距離だ。英語が全く通じない人に降ろされた場所に割って入る英語のできる近所の人が通訳してくれた。「ヤンゴンまで歩いていく」と言うと笑われた。そしてだんだん説明するのが揉める事になるし面倒な事になるので、近くの街を目的地にした。まずはポッピン。

バイクに乗せてくれたおじさんは、途中で心配になったのか、英語のできる娘か誰かに山の中で止まって電話し出した。こうなると厄介だ。説明してもなかなか通じない。おじさんはボッピンまでバスで行け、警察に捕まるぞと脅しを言われ、結局怒らせてしまった。親切なのだが頭が硬くて自分の常識しか通じないのだ。ヒッチハイクと言う旅の楽しさと移動方法を誰も知らないのだ。だけど、ほとんどの人は何も聞かずに乗せてくれて適当に降ろしてくれた。すぐにどんな旅をしているか理解できるのだ。ある時はトラックの荷台に乗せてくれ、作業員と一緒に運ばれ、ダイハツの軽トラの前に三人乗になるのに乗せてくれたりした。

なかなか高速で走るバイクの後ろに乗った時は、飛び跳ねるのを抑えるのに筋肉を使い、非常に疲れたがかなりの距離を行ってくれた。時間は午後3時になり、とある村のとあるバイク修理屋でキャプテンと名乗る男が20000チャットを差し出し、バスに乗れと言ったが納得いくように説明して断った。その代わりテントを誰かの家に張らせてくれと頼むと、寺を案内してくれた。

寺には若い足を引きずる青年がいて、お茶を入れてくれた。それはお湯に練乳を入れ、更に砂糖を入れる物でとてつもない甘さだった。青年は暗く、面倒そうにトイレや洗い場を教えてくれた。本堂は板張りでその傍にゴザと枕とブランケットを貸してくれた。

私は疲れ果てていて、横になると言って横になった。暫くすると学校が終わったようで子供が数人本堂に来て一人が飯を食っていた。自家製パチンコで遊んでいてうるさくて寝るれない。静かになったと思うと、物珍しげに近所の人がやってくる。床には蟻が沢山いてコバエが多く、バンコクで作ったメッシュ寝袋の役立つ日が来た。それに包まっていると今度は蚊の襲来だ。大量の蚊が集まってきて、テントのように柱がないネットは何の役にも立たない。しょうがなく虫除けを全身に塗ったが遅く、身体中刺されていた。そしてやっと数分寝ることができた。何度か飯を食えと起こされたが、起きることができなかった。起きると辺りは暗く夜の6時をすぎていた。時計も合っているのかわからない。誰も気配がなく、2匹の痩せた犬しかいなかった。タバコと小銭を持って賑やかな方に歩いていると、青年がいて飯に誘ってくれた。バイク屋は彼の家でパチンコ少年は彼の弟だった。カゴを被されたオカズとご飯を用意されていた。ミャンマーのヒンというオカズだ。小さな魚を揚げたものと、豚の煮物、インゲンの油炒めと言うべきか。これらは辛くなくて、パサパサのご飯によく合う。たっぷり食べるとその残ったオカズで青年の母と姉がご飯を持ってきて手で食べ出した。どうやら起きるまで待っていてくれたようだ。客に残り物を出すわけに行かなかったのだろう。申し訳なかった。青年は外に行こうと誘ってくれ、バーのようなカフェのような音楽が流れるテーブルのある店に連れて行ってくれた。途中で雨上がりの宮迫に似た彼の友達と合流し、彼の弟と四人でテーブルに座った。青年は昼間とは別人のように陽気で明るかった。先程は寝起きだったようだ。宮迫は中身も宮迫に似てかなり面白い奴だった。16歳くらいに見えたが二人とも21だと言う。そのバーには彼等と同い年くらいの女の子の店員がいて、一緒に写真を撮りたいようだったが、遠くにいて近づかない。かなりシャイなのだ。私たちは甘ったるいインスタントコーヒーを飲み、タバコを吸い、ビリヤードをして楽しんだ。そして青年がコーヒー代を奢ってくれた。

寺に帰ると8時を回り、年寄りが1人お茶を飲んでいた。青年たちはみんなスマホで楽しそうに遊んでいる。それを羨ましげに見る年寄りと小学生の弟。

私は満腹で眠くなったので横になった。皆9時にはゴザを敷いて横になった。宮迫はずっと映画を見ている。床が硬くて足が痛いがしょうがない。思ったよりよく寝れたようだ。

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