眼が覚めトイレに行くと、フレッドはすでに起きていた。マコトと商店に行き、ラスクとコーラを買って帰ると、フレッドは宿の前でコーヒーを飲んでいた。
私は結局ミャンマーに行くことにした。マコトは悩んでいたが、バンコクの宿にホームシックになったようで、チュンポンまでのバスを予約しに行った。
フレッドはビーチで泳ぎ、次の日にチュンポンに行く。皆別々になる時間がやってきたのだ。熱いハグをして、フレッドはビーチに行った。そして私が荷物をまとめ、マコトと握手をしてミャンマーへのボート乗り場に向かった。
ヒッチハイクするとすぐにシボレーに乗った金持ちそうな青年が乗せてくれて、船着き場まで送ってくれた。目の血走った案内人がワラワラと集まってきて怖い。まるで札束が車に乗ってきたような目で見ている。ボート代を300バーツ取れれば彼等は250バーツを手に入れることができるからだ。
私は勝手知ったる我が家のように、コピー屋に行き10バーツ支払って2枚のパスポートコピーをもらった。血眼の案内人にボート代を聞くと300バーツだと言う。「ああ、話にならん」という素振りをすると、コピー屋の親父がタイ語で話している内容もわかってくる。その中に「パーシッバー」と聞こえたので、私も「パーシッバー(50Bの事)」と言うと、案内人がダメだこりゃと離れていき、コピー屋の親父は笑っていた。
そして一目散にイミグレーションに行った。イミグレーションは男性で、何も聞かずに写真を撮り、「今日帰ってくるのか」「いいえ」とだけ会話してスタンプを押してくれた。
ボート屋は100バーツと言っていたが、そっぽを向くとすかさず50バーツと値を下げた。しかし船が満員になるまで30分以上待たされた。やがて船は満員になり出航した。
後ろに座っているタナカを顔に塗って麦わら帽子を被り、花を耳に刺して葉巻を吸うイカした婆さんを写真に撮りたかったが気がひける。
隣には色白のミャンマー人らしき若い女性が1人、意識されているようで緊張してしまう。小さなボートが高波を縫うように進み、次第にノーコーンの船着き場に到着した。
一目散にカスタム、イミグレーションに行き、パスポートのコピーを渡して班を押してもらう。今回は30日の滞在だ。スタンプを見ると手書きで2月の2日と書いてある。
そのまま、ガイドを無視して両替所に向かった。税関の建物の斜め前にあるタバコの置いてある人がたかっている場所だ。900パーツをミャンマーチャットに両替して約60円程の手数料だったので正解だろうか。
朝のラスクから何も食べていなかったので、ヒンが入ったステンレスの器が何個か並んでいる店に入ってみた。40パーツで一品選べるが、スープとお代わりできるご飯と、キュウリ、パパイヤの漬物が付いている。卵のヒンを選ぶと小さな器にマサラのような卵カリーが出てきた。味が濃ゆく油が多いのでご飯二杯はいける。食べるラー油のようにちょっとずつかけながら食べるか、一気に半分入れてスープも加えてかき混ぜるか。どちらも美味しい。
私は腹も満たされて、地図を見ながら北上する道を探しヒッチハイクを開始した。
驚いたことに、ミャンマーではタクシーと名乗るバイクの運転手に「ノーマネー」と言うと、タダで乗せてくれるのだ。2台目のバイクは英語ができる人だった。タイのサムイ島で働いていたようで、バスターミナルまで乗せてくれ、値段も聞いてくれた。ヤンゴンまで3000円程だった。しかし一気にヤンゴンまで行くのはもったいない。急ぐ旅ではないのだから。彼にゆっくりとヒッチハイクしながら旅したいと伝えても中々理解してくれない。彼等の、いや多くの人は旅行とはリゾート地に行って贅沢をしツアーのマリンスポーツをして土産物を買い、カジノで遊んでマッサージしてもらい酒を飲む。という教科書通りの旅行しか知らないからだ。
彼にビーチが見たいかと聞かれたので、ビーチにテントを張って一泊しようと承諾した。そこは長い橋を渡って行ける島でプロトントンという島だった。
一番奥にリゾートの看板がある閑散とした美しいとはいえないビーチがあり、人は少なくていい雰囲気だった。地元の人が楽しそうに泳ぎ、外国人は1組だけ居てすぐに帰った。確かにカップルにはロマンチックではない場所だが、ソロキャンプには最高だ。その高級海の家でコーラを運転手と飲み、彼は帰ると言って帰っていった。帰り際に「お前の言っている事が少し理解できた」と言っていた。
砂浜の一番奥の木陰に良いスペースがあり、小石をどけてテントを張った。テントは299バーツの中華製でシームテープも無いし、フライシートもないので、雨が降ったら中にはいるだろうが、この辺で冬に雨は滅多に降らない。マットはないがブルーシートのような底の生地に横たわり、やっと一息つけた。床は砂地で平地だが湿っていて硬くなっている。じんわりと背中から冷えてくるのを感じて嫌な予感がした。安眠のためのマットは大事なのだ。
ゆっくりと夕日を見ながらソロを満喫する贅沢。寂しさは冬の自分の部屋より感じない。日本にいる方がかなり寂しさを感じるから旅立った理由でもあった。早い時間に汗をかいて痒い体を掻きながら寝苦しい浅い眠りについた。
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