ミャンマー南部イエからヤンゴンまでのバス移動

私はミャンマーの南部イエという街に滞在していた。

起きると8時ごろだった。シャツがまだ乾いていないし、靴も湿っていたので、宿の前で天日に当てて干した。チェックアウトは12時だ。朝飯を食べにまた市場の方へ歩いてみた。

川沿いの食堂でカレーを食べ川を見ながらボーッとして、ボーッとしながら街を歩いてみた。宿から離れてみると住宅街になり、舗装も無くなって更に人目を浴びるようになる。「ミングラーバ」と手を合わせて挨拶しながら歩く。

一軒の家に人だかりがあった。車やバイクも停まっていて、なんだろうと思っていると、おじさんが私の腕をギュッと掴んで高床の小屋へ強引に連れて行った。小屋では皆食事をしていて、テーブルに座らされた。食べろ食べろと色んな皿を持ってくるが、満腹だと言うとデザートの皿を持ってきた。甘ったるい紅茶も。

おじさん達に周りを囲まれて、ミャンマー語で何か言っているがわからない。取り敢えず「ジャパン」とだけ言うと喜んでいる。言葉が通じないとわかると、おじさん達は立ち去った。そして次に若者に囲まれた。頭の良さそうな眼鏡をした男の子が英語ができるようだ。だけどスマホの翻訳を頼りにしている。なんの会合か知りたかったので、「What’s this party?」と翻訳機に言った。説明が難しいようだが、昨年死んだ親戚が集まって仏に捧げるために祈る。つまり1回忌の法事だった。

タバコを交換してみたり色んなことを話した。すると身振り手振りの上手なおじいさんが現れた。その子の父親だと言う。全く喋ることなく、上手にお互い身振り手振りで会話が成立した。息子が日本に行きたいから友達になってくれ。と言うのでfacebookで繋がった。要するに日本人のコネが欲しかったのだ。コネはあった方が良いことを彼らはよく知っている。そして帰りにその子が宿までバイクで送ってくれた。

シャツも靴も乾いて荷をまとめてチェックアウトした。夕方5時まで時間がある。宿に荷物を預けてタイのパーカオマーを腰に巻いて表でタバコを吸っていると、宿のオーナーらしき男性がロンジーというミャンマー人男性用腰巻をプレゼントしてくれた。紺色の生地にピンクの細いチェック柄の高級感があるものだった。その場でロンジーに変えたところへ、宿の部屋から一人の若いドイツ人が出てきた。久しぶりに会話ができて、意気投合して夕飯を食べに出かけた。

彼も同じくミャンマー南部から入国して北上していた。テクノが好きで腕には麻柄の美しいタトゥーが入っていた。日本ではその柄はヘンプだと教えると喜んでいた。昼に食べた川沿いの食堂で彼は海老のカレーを注文したが、あまりスプーンが進まなかったので口に合わなかったのだろう。確かにミャンマー料理は西洋人には合わないかもしれない。皆日本といえば寿司やラーメンのイメージで、日本人は寿司とラーメンを食べながら日本酒を飲んでいると思っているようだが、当たってる場合もある。

夕方5時になったのでザックを担いで宿を後にした。大通りまで行き、ヒッチハイクでバス停まで行こうとしたが、タクシーしか止まらない。500チャットで行ってくれると言うのでバイクタクシーに乗ることにした。着いた所は正しくバスターミナルで、大型のバスが停まっている。入口のバス会社でヤンゴンまでのチケットの値段を聞くと10500チャットでだと言う。予約ではなくここでチケットを買うのだろう。一番後ろから二番目の席が取れた。待つこと1時間ほど、次第にそのバスに乗る人が集まってきた。腹が減ったがバスターミナルなのに辺りには何もない。屋台の卵入りパンケーキを買って食べると甘いがかなりの美味しさだった。

そして中華製の大型バスが到着し、皆乗り込んだ。席は申し分なく車内も綺麗なのだが、自分の席にだけ充電用USBの差込がない。隣はあるが充電できない。さすが中華製。私の隣には誰も座っていないのが幸いか。バスはゆっくり、大きなクジラのように動き出した。窓はスモークガラスなので殆ど何も見えない。リクライニングはできるが、前の人がかなり倒していて窮屈だ。こちらもいっぱいまで倒すと、一番後ろで横になって寝ていた交代の運転手からクレームが来た。とにかく蚊が多い。なぜこんなに蚊が車内に入るのか。冷房が効き過ぎて16度くらいになっている。ブランケット無しでは凍えてしまう。そして殺虫剤か芳香剤の臭いが強烈。気分が悪くなる。

イエからヤンゴンまでは平地らしく、道も整っているようでバスは高速で走っている。揺れはそれほどではない。ヤンゴンまでは約600km。バス代800円じゃ文句は言えない。

空腹のまま眠っていると、バスが止まり、ドライブインで休憩のようだ。寝ぼけ眼でバスを降りると巨大な食堂があった。皆トイレに行く。トイレは無料で綺麗だった。当然ヒンというカレーなのだが高い。5000チャットだというがしょうがないので頼んだ。すると付いているおかずの皿の数が多い。野菜やペーストやスープやお変わりごはんなど。腹一杯食べれたがあまり美味しくはなかった。

先程クレームを言ってきた交代用運転手が話しかけてきた。ジャパン!?と言う。「お前の国の製品はどれも良い。中華製はダメだ。名前はなんだ?よし、おれ寝る!」と言っていた。若干リクライニングの角度の許可が緩くなったようだ。そして、車内の匂いも温度も落ち着いてきて眠ることができた。

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