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中国の田舎にはオート三輪が今も活躍している。宿の近くの駐車場にあったブリキのおもちゃのようなこの三輪。なかなかよくできているが、中華エンジンなのが残念。
KONKA International Youth Hostel コンカ インターナショナル ユースホステル
ぼく達は早速荷物をまとめて、バスターミナル近くのコンカというユースホステルに移動した。ユース(青年)だが、60を過ぎた中年夫婦も泊めてもらえる。ここは20代か大学生のボランティアスタッフが住み込みで働いている明るく元気な印象のホステルだ。宿泊客も若い女性が多く、自転車ツーリストは殆どいなかった。レセプションは広く、ソファや長いテーブルがあり、リラックスできるカフェのような空間も嬉しかった。レセプションから宿泊部屋にいくには、ビルの屋上を通るのだが、そこには常設のテントが張ってあり、中にはベッドが6個ほど並んでいた。テント泊は25元と言っていた。蚊やいやな虫がいない廉定(カンディン)なら不自由なく過ごせそうだ。喫煙所もそのスペースになり、川と山が見渡せて、いい眺めだった。そして別棟に入ると、自炊できるキッチンがあり、広いトイレとシャワー室がある。トイレは清潔で洋式もあるのが嬉しい。チェックインすると、シーツと枕カバー、布団カバーを手渡され、自分でシーツなどを取り付けなければならない。20元でスタッフの賄いを一緒に食べれる。夕食後にロビーで熱にうなされながら、横たわっていると、若い小姐がUNOをやろうと英語で話しかけてきた。大学生らしき若者に混じって久しぶりのUNOで盛り上がり、中国学生的コミュニケーションを味わった。後に彼女は住み込みのボランティアということがわかった。宿を盛り上げる仕事の一環だったのかと思うと、中国人のケアの良さに感心した。
廉定(カンディン)の町は予想以上に大きく、町の中心まで歩くと百貨店やコンビニ、カフェや銀行が立ち並ぶ賑わいだった。ぼく達は路地裏の婆炒飯というお婆さんが中華鍋を振るう食堂に入ってみた。回鍋肉炒飯と魚炒飯を注文したが、出てきたものの見た目は同じで、薄っすら豚肉とニラ、魚の破片が入っていた。当然味も予想する通り、特別美味しくはなかった。廉定に来てから美味しい食堂にまだ出会っていなかった。チベタンは女性が料理するようで、ぼくとしては禿げて小太りの漢人が中華鍋を振るう方が美味しい気がする。
ぼく達は歩き疲れて1元のローカルバスに乗り、南無寺というチベタンゴンパに向かった。バスは超満員で、小豆色の袈裟を着たラマ僧について行こうと、バスを降りた。チベットのラマ僧は皆クールで朴訥なイメージだが、仏教徒なので基本的に優しく、頼り甲斐がある。言葉は通じないが、何となくそのラマ僧とぼく達は付かず離れずになり、息を切らしながらゆっくりと坂を登った。間もなく南無寺と書いた大きな門をくぐって階段を上ると、正面に見事なチベット密教寺院が現れた。金色の屋根のその姿は金閣寺を思わせるが全く違う。中国人マダムが院内の百合の花の前で写真撮影会を始めて、撮ってくれとせがむ。先ほどのラマ僧も日本人が珍しいようで、ぼくの写真を撮っている。本堂に入ろうとすると、階段に腰掛けていた中国人青年に、靴と帽子を取って撮影はダメだと言われた。その通りにして本堂に踏み込んだ。床はヒンヤリした板張りで薄暗く、巨大な仏像の前で五体投地を行う習わしだ。
五体投地とは
チベットの仏像は日本の仏像に比べると丸顔で、日本の仏像は目が半開きなのに対して、チベットの仏像は目をかっ開いている。釈迦をセンターにして、帝釈天や毘沙門天やヒンドゥーの神々も祀られている。日本の寺と違って巨大な装飾を施された箱に入れられた仏像が本堂の中央にあり、周囲を歩けるようになっている。賽銭箱がいくつも備えられていて、歩きながら賽銭を入れていく仕組みになっている。チベットでは、檀家にお経を唱えに来ないので、寺の収入は賽銭と仏具販売ほどかもしれない。
ぼくらは長らく本堂の前に腰掛けて、青い空と低い雲と、本堂をぐるりと取り囲んだラマ僧の宿泊宿をぼんやり眺めていた。そこは修行する場というより学校という雰囲気で、ラマ僧達がふざけあったり、スマホをいじったりしている。1人のラマ僧が鐘を鳴らして、修行僧を集めた。ダラダラと集まったラマ僧達は本堂に入り、予め置かれていた座布団に腰掛け、お経を唱え始めた。それは日本の仏寺の修行のような厳格な雰囲気は無く、僧は子供のようにキョロキョロしたり、片手間にダルそうにお経を唱えていた。
ぼく達は更に満員のバスに乗って宿へ帰った。
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