ホーチミンのダンシン市場の迷路のような、クソ暑い細い市場内に点在する中古ミリタリー店。
中でも骨董品のライターや時計を扱っている店が数店あり、ベトナム戦争当時のビンテージジッポーライターが1,000円から4,000円ほどで売られている。
そして、多くのビンテージZippoを所有しているのは在ベトナム中国人であり、彼らは金色の成金丸出しの腕時計をチラつかせ、憎たらしいジャバ・ザ・ハットのような目で価格をふっかけてくる。これら、ベトナム戦争Zippoを欲しがるのは日本人だけであり、ぼく達の年代に人気がある。それは所ジョージ率いる横浜横須賀周辺からの情報と影響であり、興味のない人から見たらゴミ同然のビンテージ、アンティーク品を高価で売れると信じて購入するのだ。
ぼくはまず、ダンシン市場のブロック外の道路に面した北側にある中国人の店先のショーケースに入れられたライターや、ミリタリーウォッチを見ていた。すると中から小太りの、如何にも中国人と一目でわかる中年の腹が出た主人が出てきて、「日本人か?」と尋ねられた。「ふふふ、最近見なかったが、久々に日本人の獲物が現れたワイ」と言わんばかりの態度に多少イラつきながら、アルミ製のベトナム製オイルライターにも心を奪われていた。衝動買いとは恐ろしく、欲しいものを並べてみると32,000円分にもなってしまった。それでもかなり値引きしてもらたのだ。本気で買うつもりで「今は持ち合わせがないからATMで金を下ろしてくる」と主人に告げると、主人は少しでも前金を払えないかと言ってくる。それは当然、客が冷静になられて購買意欲が無くなるのを知っているからだ。ならばクレジットカードが使えるようにするべきだが・・・
そして案の定、冷静に考えると必要なものでもないし、日本で高く売れるような気もしなくなってきた。
そして、ぼくのダンシン市場通いが始まった・・・
まずはZippoライターについての鑑定を勉強し、ボトムスタンプによる年代表を入手した。
どうやら、上のミッキーマウスかミニーマウスの彫り物は、同じデザインが多く色んなところで売られているところから偽物と判断できる。当時はミッキーやミニーやスヌーピーをライターに掘ることは少なかっただろうし、裏面の「IF YOU WANT FUCK SMILE WHEN THIS LIGHTER YOU HAND ME BACK」(このライターを持って帰るとき、お前は笑顔でファックできる」という意味だろうが、文法がおかしいし、何故自分のライターなのにYOUと書いているのか。
戦争当時の実物があるとすれば、40ドルで売られているはずはなく、彫り物はレプリカとして35ドルほどで購入した。Zippo自体が本物であって年代表によれば、ボトムスタンプのIII IIIは1968年を表している。色んなジッポーを見比べて、中の刻印もチェックし、土台だけでも本物を選ぼうと暗い店内で汗をかきながら、必死に鑑定しているときは楽しかった。
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