ベトナム:サイゴン最後の日の巻

フッカーンホステルをチェックアウトして、ザックを預かってもらい、昼過ぎにカンボジア大使館に行った。カンボジアに行くには1ヶ月30ドルのビザが必要なのだ。ビザがもらえるのは明日の朝だと言われたのだった。
次の日、どうせビザ発給は遅れるだろうと思い、大使館の昼の休憩時間あとは午後2時からなので、ちょうど午後2時に大使館を訪れた。しかし、彼らの怠慢は想像を遥かに超えて「明日の朝来い」と宣った。これには流石にキレて「いや、今日バスに乗るんだ」と強く言った。すると「じゃあ夕方5時に来い」と言われたので「いやいや、お前らに今日の朝来いと言われた」と言った。すると奥に座っている係長みたいなおじさんが、「今ボスが上にパスポートを持って行ってるから20分後に来い」と言う。20分なら待とうと、しょうがなく近所のカフェでコーヒーを飲んだ。そして、やっとビザを手に入れることができた。こんなに面倒ならアライバルビザにするのだった。と思うところだが、面白い体験ができて、暇つぶしにもなったので、良しとする。

まだまだ時間があるので、暇つぶしにベンタンマーケットでも行ってみるかと、数年ぶりにマーケットに入った。自分がそそられる物が全く無いのは、数年前に行って知っていたが、オニーサンオニーサンと、手を掴まれるのは悪い気もしない。市場を一周回って宿に戻った。
宿の前では、林とデンマーク人のタフガイが話していた。話しに入るが、そんなに面白くない。やっぱり、日本人くらい頭がおかしくないと、気が合わないのだろうか。みんな大学生のように楽しそうだが、ジャッカスくらいバカな外人じゃないと、ぼくは楽しめないのだろう。宿のロビーには、3日間くらい一緒に過ごしたスウェーデン人シャルロットがひとりでスマホをいじくっていた。シャルロットは、薔薇のタトゥーが右腕に数カ所入っているが、自分の真面目さのコンプレックスを消そうとして入れたのかもしれない。そこが可愛くて、いつも人の目を気にしているところも可愛い。彼女とはあまり話していないが、考えていることは大体わかるようになった。林は男らしくて力強くて、たくましくて、リーダーシップがあり、義理人情に厚く、爽やかで、ポジティブな台湾人で、日本人や年上をリスペクトしているのがわかる。まあ、こんなふざけた年上のバックパッカーがいると、みんな安心するのだろう。ぼくたち4人は、ぼくのお別れ会をささやかにしてくれるようだった。リンはぼくに何を食べるか任せると言う。しかし、思いつかない。生春巻き屋の屋台が並んでいる通りを思い出して、皆んなで手巻き寿司風に盛り上がるかと考えて席に着いた。しかし、プラスチックのイスは50センチほどの高さしかなく、テーブルも低い。そして何より床は食べかすやゴミだらけで汚い。ベトナム人は清潔の意識がインド人より低いと思う。食事をしながら何でも自分の足元に捨てる。そしてそれを店が閉まるまで掃除しない。ベトナム人以外の女子には、食欲がなくなるだろう。案の定、シャルロットは春巻きを二つ食べてそれ以上食べなくなった。汚くて臭くて砂が多い道を歩くのも嫌になってくるだろう。デンマーク人のタフガイが自分の知っているバーに行こうと言いだした。ぼくたちは一旦宿に戻ってトイレに行き、ぼくはザックを担いでデンマーク人のバイクに乗せてもらい、先にブイビエン通りに向かった。そのバーは、サイゴンビールのボトルが12000ドンという安さで、日本円で約60円だ。となりに整形が失敗したようなトランスジェンダー(ニューハーフ)が欧米人のおじさんと座っていて何度もぼくと目が合った。デンマーク人の友達の、ちょっとオタクっぽいアイリッシュ男がやってきたが、英語が難しくてあまり聞き取れない。時間となり、シャルロットとリンとハグをして別れを惜しんだ。リンとは2週間ずっと一緒にいたようなものだ。こんなにも仲良くなるのだ。

夜の11時、ぼくはバス会社に言われた通り、ツアー会社の前で30分前に待っていたが、ザックを担いだそれらしき他の乗客が見当たらない。カフェでお茶を飲んでいたが、15分前になっても誰も来ない。おかしいなと思い、カフェにいた英語のできそうな女性に聞いてみると、ここのバス会社の乗り場は向こうだと言う。チケットを見せてみろと言われたので、彼女に見せると、これは午前11:30のバスだ。夜なら23:30と書くはずだと言う。頭が真っ白になった。そして、彼女は「ウチで夜行バスのチケットが買えるぞ。それか、一晩泊まって明日バス会社に間違ったと言えば、タダで明日の便に変えてくれるぞ」と言う。これは迷った。1100円を捨てて、新たな夜行バスチケット1350円を買うか、一晩どこかの宿に泊まって、明日のバスに乗るか。だが、宿を探すのが面倒だったし、熱い別れをしたので、今更間違えたと言うのもバカ丸出しだ。何より気持ちがもうカンボジアに向かっていた。そして、彼女のツアー会社でチケットを買うことにした。現金を持っていなかったので、カードで支払おうとすると、2種類のカードが使えないと言う。そんなはずはない、番号を入力してみろと言うが、使い方がわからないらしい。しょうがなくATMに行くが、2度もエラーになった。もうすぐバスが出発する時間だ。別のATMでようやく現金を引き出すことができた。急いでいるときに限ってトラブルが続く。やっと、2台目のATMで現金を入手できた。そして無事バスに乗り込むと、空きのベッドが結構あり、一人で二人分使える余裕さ。だが、バスがボロいため、エアコンの冷気が強レベルで壊れた穴から吹き出していて寒い。ぺらぺのブランケットを貸してくれたが、寒い!隣のカナダ人の女の子はシャツと、ニット帽で普通に寝ていた。流石カナダ人。ぼくは、揺れと寒さと、尿意で国境まで眠れなかった。夜の2時過ぎに国境到着。しかし、当然閉まっている。用を足してベッドに戻り、自分のブランケットを出して、包まったがまだ寒い。そのうちドライバーがエンジンを切った。今度は段々と暑くなるが、熟睡していた。

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