北九州市八幡西区の南端、直方との境に位置する畑貯水池は、私の幼い頃からのバス釣りのポイントだった。畑貯水池はV字型をしていて、流れこみが二箇所にあり、どちらかがポイントになる。貯水池や野池は貯水量によって、ポイントが変化する。梅雨が明けた7月の後半は、やっと貯水量が7割になったほどで、まだまだ赤土の地面が見えるほどだった。

畑貯水池は40センチを超える大型のバスがいるのだが、中々釣らせてくれない。子供の頃はバス釣りを始めたばかりで、いつも自転車で畑貯水池に竿を持って行っていたが、ほぼ坊主の日々で連れた試しがなかった。

それもそのはず、その頃はバスの居るポイントを見極めていなかったからだ。

ブラックバスは水温18度を好み、真夏の日中は活性が低く、気温と水温が下がる朝まずめと夕まずめと、夜に活性が高くなる。貯水池のような大きなダムでのポイントは、酸素が多くて水温が低く、餌となる小魚が集まる川からの流れ込みと、その周辺であり、流れ込み以外では、カケ上がりの際ギリギリのところで、木の影になっているところを回遊していたり、木からの落下物をじっと待っていたりしている。

ボートやフローターがあれば、木の根元ギリギリの際にワームを落とすと、食らいつ事がよくある。丘からであれば、ゆっくりと音を立てずに忍び足で水の手前から投げると良い。

子供の頃はもっぱらオカッパリだったので、そんな事も知らずにズカズカと水際まで行って、お気に向かって遠投していた。それでは釣れるはずはない。

畑貯水池にはナマズも多くいて、日が沈むとナマズが活発になり、ワームで釣れる事もよくある。

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中々釣れない畑貯水池より、型は落ちるがよく釣れるのが、畑貯水池に流れ込む一段上にある小さな貯水池で魚影が濃く、平均20〜35センチの型が釣れるのでフローターで夕まずめを狙った。

白木貯水池の貯水量は100％で、満水となると木の枝が水面すれすれまであるので、邪魔をして、フローターからでも良いポイントに投げれない。

久しぶりに空気を入れたO型のチューブフローターを担いで、ウェーダーを履いて汗だくになりながら、カブにまたがって到着した時は夕方6時ごろだった。

水温は高くて全く冷たくない。メガバスのLIVE-Xスモルトを3投目で、いきなりヒットした。約23センチ。それから流れ込みまでゆっくりと進みながら、キワを攻めるも、全くあたりが無い。次第にあたりは暗くなってきて、流れ込みについた時には、トンボが無数に飛び交い、筆でサッと書いたような雲はピンクに染まっていた。

日曜日なので、池の横にある民家から声が聞こえくる。どうやら家族でBBQをしているようだ。おじいさんとお婆さんが物珍しそうに、浮き輪に浮かんだ釣り人であるこちらを眺めている。

やがて、水面にまで伸びてきている草が見えてきて、水深が浅い事がわかってきた。減水していた時に生えていた草が水に埋もれて、野鯉や子バスの住処と成っている。

5センチ〜15センチの子バス達が30匹以上群れをなして、珍しそうに巨大な浮遊物であるフローターの周りに集まってくるのが醍醐味だ。そして、40センチ〜60センチもある野鯉が活発に泳ぎ回っている。

流れ込みに、ゲイリーのテイルが無くなったグラブを投げてみても、全くあたりが無い。どうしたのだろう。

そして、ちょっと離れたところに大きな木があり、覆いかぶさった枝の中へ入る事ができた。その木の根元の水際に投げると、明らかに20センチを超える引き具合で、水際から離れてこちらの方へ深く深く潜りながら、何かが掛かった。

ブラックバスは大抵、バイトすると横に走り、水面に向かってエラ洗いをしようとする癖があるので、違う動きにちょっと驚いてリールを巻かずにちょっと様子をみてしまった。

そして、浮かんでいる自分の下あたりで動きが止まった。どうやら何かに引っかかったようだ。糸を手で引っ張ってみると、草のようなものが付いてきて、バラしてしまったようだ。

もう一度、同じポイントへイモグラブを打ち込むと、またもや同じ動きで何かが食らいついた。今度はリールを巻いて深く潜らせないようにすると、35センチほどのバスがイモグラブを飲み込んで釣れた。

イモグラブを使うとよくある飲み込みだった・・・

エラから指を入れてワームフックをつまみ、ひねってやるとうまくフックが外れる。どうやら殺さずに済んだようだ。喉の奥に大きな針が引っかかって、喉から引っかかった部分が飛び出るほど引っ張られて、さぞ痛かっただろう。

あたりはすっかり真っ暗闇になり、ルアーを投げてもどこへ着水しているやら、空は暗くて青いのだが、遠近感が掴めず、対岸の木の位置がどこにあるやら、全く釣りにならない。

おまけに耳元でプ〜ンという蚊の羽音が飛び交って集中できない。この時期の九州の日の入りは19:00で、慌てて家に帰り着いたのは夜の9時近くだった。

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