ポルシェとの出会い

中華製の寝袋インナーシーツを使ってみたが、エアコンの温度が高くて暑かった。9時に起床、私からせこいレッテルを貼られたオバさんの店でクリームパンを二つ買い、セブンへライターを見に行くと、Clipperのライターがあるではないか。Bicよりは劣るものの、中華製もしくはタイ製よりは十分良い。15バーツ約50円。目玉焼きにケチャップをかけ、ネスカフェを淹れて、オーナーの差し入れのロンガンを添える。中々良い朝食だ。

暫し寝て起きると11時で、隣で遅くまで寝ていて、自分の飲んだカップや皿を洗わずにドアを開けっ放しにし、荷物も散らかし放題の19歳ドイツ人スケーターが、朝メシ食べたか聞かれたので、一緒に食べたかったのか。彼は余り口を開けないので、何を言っているのか全く聞き取れないから困る。何度も聞き返すから自分の話し方が悪いと気づかないものなのか。自分本位な奴とは飯を食べたくない。

皆チェックアウトし、宿泊者は減って三人となった。暇なので、テスコロータスというモールの中にあるフランスのスポーツ用品店、デカトロンでも行ってみることにした。市場の前からエアコン無しバスで8バーツの距離にある。

Noodle Boat

その前に腹ごしらえすべくメシ屋を探すと、バス停の向かい側に満席の食堂が見えた。ちょうどランチタイムで、ガラガ ラの店もあるのに、そこは満席なので期待できる。どうやら米の麺屋のようだ。15とか30とか書いてあるので、安いのだろう。まず麺の太さを聞かれるので、太いのを選んだ。そして、食べ終わった感じのカップルに相席を許してもらえた。頭にパーカオマーを巻いた、変な東洋人の登場に客と店員の雰囲気が一瞬どよめいた。どうやらパーカオマーがかなりウケるようだ。

椀に「えっ?」となるくらい不十分な量の麺と黒い物が沈んだスープと、軽く茹でた空芯菜と、フィッシュボールが二つ入ったものがテーブルに置かれた。次にモヤシとバジルが入った皿が置かれ、氷とストローの入ったステンレスカップが置かれた。持ってきた姉さんと目が合うと、微笑むと言うより、「コイツ食えるのか?ふふふ」というような目で何だかニヤケている気がした。

そして、前の彼女が小皿に入った白いものを食べているのを凝視して、自分の前にある蓋がされた小皿を恐る恐る開けてみた。なんだか粥のような物が入っていた。それを見ていた前の子と目が合うと、笑いながら「Sweet」と言う。相方が「Very nice」と言った声が女性だったのに驚いた。実は女性だったのだ。そして、爪楊枝を探していたので、こちらに隠れていた楊枝入れを渡した。店のシステムがわからず、周りを見渡すと何故か椀が2つある人もいる。少ないから追加したのだろうか。彼らは席を立って、一人になった。

相変わらず席は満席だった。まず少なく麺の下に隠れたスープをステンレスのレンゲで少し掬って飲んでみると、薄い味で牛骨の出汁が出ているようだ。皿に盛られたバジルとモヤシを全部ではなく、適度に入れてみた。いつも食べていたラオスのうどんを思い出した。まとまって丸くなっていた麺をほぐしてスープと絡めて、少し麺を食べてみた。やはり薄いので、四つの調味料である、ドレッシングのような酸っぱいソースをその小さなオタマでひと掬いかけてみた。うむ、バジルとモヤシと空芯菜が美味しくなった。何度か麺をすすり、生のバジルとモヤシをパリパリ、モシャモシャと口に入れ、次に調味料の一つである砂糖を適度にかけて混ぜた。

うむ、かなり味がしっかりしてきた。そして最後にナンプラーと唐辛子を入れた。それで完成なのだ。ちょっとした絡みと、ナンプラーの塩辛さ、砂糖の甘さと、ドレッシングの酸っぱさがうまくマッチした。これは料理する人にしかわからない加減だろう。

スープの黒いものは豚か牛の血のようだ。辺りを見回しながら、作り方を見ながら食べていると、若い女の子が一人入ってきた。後ろ斜めに女性が一人でテーブルに座っているから、そちらに行くだろうと思いながら下を向いて食べていた。すると、「Excuse me? ここに座ってもいいですか?」と聞かれたので、頷いて手でどうぞどうぞと示した。

その娘も小さな皿に入った白い粥状のものを真っ先にスプーンで掬って食べた。「Sweet?」と聞くと、「Yes bit sweet not so sweet」と上手な英語で答えた。「What’s that? Yogurt?」と聞くと、なんと英語で言うかわからないようで「coco」と言った。私「Coconut?」彼女「Yes」。多分、乳製品は使わないと思うので、米か餅米の粥に砂糖とココナッツを入れたものだと思われる。続いて彼女の元に二つの椀が置かれた。その椀には椀の大きさに対して、余りにも少ない量の麺とスープが入っているだけで一つのフィッシュボールと、空芯菜は入っていなかった。小皿のスイーツを指して「それは幾らなの?」と尋ねると、彼女は店の姉さんに幾らか聞いてくれた。予想通り10バーツだった。

彼女「Where are you from? Japan?」

私「Why you know!!」

と言って驚いた顔をすると、ウケていた。

彼女「見た感じ日本人だから笑笑」

彼女は四つの調味料を全て椀に入れ、テーブルの籠に入っている透明の袋で梱包された豚か鶏の皮の揚げ物を、慣れた手つきで選んで椀に入れた。疑問だらけの私は色々と質問した。

「なぜ君は少ないものを二つ頼んだのか」「その揚げ物は何?」「その少ない椀は幾らなの?」「私の頼んだのは幾らなの?」「君はこの辺で働いていて今お昼の休憩なの?」。。。

どうやら小さい物を二つ注文したほうがお得らしく、私のは二倍の物で、小15バーツ大30バーツなのだそうだ。彼女は慌てて食べながら、質問に答えながら、「食べてみな」と、揚げ物を少しポイと私の器に投げ入れた。思った通り、豚の皮だと思う。油の味が余り良くないのか、豚の脂が良くないのか、アッサリとしたスープには揚げ物が合うのだが。彼女も私に質問をしてきた

「一人で来てるの?」「バンコクの次はどこに行くの?」「豚と牛どちらを注文したの?」

私は質問に答え、もう自分は食べ終えたので、席を立たなければいけないと感じてきた。

「毎日ここに来てるの?」「名前は?」

と聞き、聞き取れない発音しづらいタイ人の名前をちゃんと知りたくて、テーブルにある注文用の紙とペンを差し出した。すると彼女は「Porscher」と書いた。日本の医者あたりが好きそうなイタリアの有名なスポーツ車の会社名に似ている。私の名前も聞かれたので、書いて渡し、二人とも大事そうに鞄に入れた。そして明日の14時にここで会おうと約束して私は30バーツ支払って店を出た。私はそのまま夢心地でバスに乗り、テスコロータスとBig Cエクストラのモールに挟まれたバス停で降りた。

テスコロータス(Tesco Lotus)は、タイで有名な今時の大型ショッピングモールで、日本で言えばAEONモールのような、街の中心地から少し離れた場所にあり、銀行、衣服、日本食レストラン、薬局、家電、スーパー、スポーツ用品など、なんでも揃う。そしてBIG Cもタイでは人気の大型ショッピングモールで、店舗数が多く、エクストラや小型の店などもあり、フードコートではタイ料理が55から60バーツで食べれる。まずはテスコロータスをゆっくりと見て回ると、殆どがラーメンやカツカレーや丼ものの日本料理屋のレストランが目立っていて、前回のチェンマイを思い出した。パーツの残金が残り少なくなっていて、両替屋を探したが、銀行は多くあるのに両替はなかった。そして広いデカスロンの商品を見て回り、長袖の化繊でできた迷彩柄のTシャツをクレジットカードで買った。値段は300THB=1080円。Decathlon のスタッフは外国人が多く、車椅子に乗ったスタッフもいて、自分も働きたくなった。

驚いたのはレジ袋を完全に廃止したのか、商品がひとつだからくれなかったのか、なにかと時代を先どりした経営方針を感じた。Tシャツを手に持ったまま、食料品のコーナーに行き、33バーツの全粒粉食パンと虫除けをカードで買ってその袋にTシャツも入れてBIG Cへ向かった。

BIG Cでは、食料品売り場で肉類の値段をチェックし、写真を撮ってしまうのは、前回もしていた。特売の鶏手羽元は100グラム20円ほど。どれも日本より3割ほど安い気がする。痩せているが鯖が1匹100円程だった。

フードコートでは現金しか使えず、55バーツのオムライスときのこスープを頼んで食べたが、黒いスープの味が濃すぎる。塩加減が強いのだ。レストランはMK、マクドナルド、Swensens、ミスタードーナツ、Amazonコーヒー、やよい軒、日本食ビュッフェ、8番ラーメンなどあった。一旦外に出て裏のモールに行くと、更に日本を意識した高級モールがあり、実際に日本人も多くいた。バンコクで見るバンコク在住らしき日本人は、日本にいる日本人と変わらないのだが、高級感があり、清楚で清潔で、皇族のような雰囲気があり、ワンランク上の人種に見えたのが不思議だ。

ふと、全身に刺青を入れた女友達を思い出したが、そんな輩も中々海外では見ることがない。残金が50バーツしかなくなり、スーパーリッチというレートの良い両替屋を探したが見つからない。

歩きすぎてヘトヘトになり、地下鉄と空港列車で宿へ帰り着いた。

宿にはマレーシア人の若者が二人チェックインしていて、話すと、日本のバイクパーツブランドを探しに来たらしい。

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