バンコク滞在日記

4時半に目が覚めた私は、暇なのでインスタントラーメンに卵と残ったパクチーとネギを全部加えて食べた。

早朝の散歩にいつもと反対方向に歩いてみた。朝は18度以下で、長袖のTシャツでも肌寒く、こんな南の国でも冬なんだと実感する。

住宅の路地を抜けると川があり、駅があるのに感動した。オフライン地図にそのフェリーの駅があるのに気づいていたからだ。そしてまた寝て起きると9時半だった。近所のセコイおばちゃんの商店でいつものパンを二つ買い、10バーツ払ってレジ袋は要らないと言うと、初めて「サンキュー」と言われて微笑まれた。さすが微笑みの国だ。

目玉焼きとネスカフェを淹れ、二度目の朝食を取り、両替屋のスーパーリッチに行くために市場から71番のバスに乗った。今日はパスポートを忘れずに35ドル両替する。暫し歩き、丸亀製麺の看板が日本の占領地のような気分にさせられる。ゲートウェイEkamaiショッピングモールの中にスーパーリッチがあるらしい。中に入ると、24時間MaxValuもあり、丸亀の一番安い素うどんは、69バーツ250円。他にも日本のフランチャイズがこのビルの大半を占領していた。

目的のスーパーリッチは2階にあり、20ドル札を1枚、5ドル札を2枚、1ドル札を5枚とパスポートを出すと、1ドル札を5枚だけが両替できて、あとは古いからできないと言う。まさか!と思ったが、3階のSCBという銀行で両替できるとの情報を頂いた。早速3階に行くものの、見つからない。聞いてみると3階であるところが1階で、あと2階上だと言う。

その通りにSCBがあり、番号札をもらい、呼ばれて「USドルを両替したい」と、パスポートとドル札を差し出した。色んな紙にサインして、電話番号がないので宿の名前を書き、10バーツ程の手数料で両替してもらえた。そして、更に上の階にフードコートがあり、昼食をとることにした。

トレイにオカズが入って2品選ぶと55バーツという店で、魚のフリッターらしきものと、鶏肉とジャガイモのカレーを選んでサーブしてもらい、前の人がスープを貰っていたので、スープと言うとタダでもらえた。キャベツとキュウリと小茄子が取り放題で、唐辛子ナンプラーと、好物のエビソースを少しずつ小皿にとって、中々豪華な食事の見た目に満足した。

まずはタイでは珍しいジャガイモにスプーンを入れると、中々良い硬さに茹で上がり、甘辛いクリーミーなカレー味が素晴らしい。鶏肉も骨が少なく、カレーがよく合っている。そして、合間に生のキャベツにエビペーストを少しつけて嚙る。うううむ、美味い。甘くて辛くて生臭くて味が濃くて、イカの塩辛のような、あみ漬けのような、名付けると沼エビの塩辛と言うべきか。日本酒にも焼酎にも合いそうな、このソースの虜になった。魚のフリッターも甘酸っぱく味付けしてあり、かなり上出来で、「これは今回で一番を獲得したな」と言うほど満足してしまった。是非バンコクに来た時は訪れて貰いたい。自信を持ってお勧めする名も無き小さな店だ。

満腹になり、一番下まで降り、帰りのバスを確認するためにWi-Fiを探すが、中々見つからない。どこのWi-Fiもログイン画面が出てきてサインインもできない。唯一OISHIというフランチャイズレストランが登録すれば使えた。窓もドアも開けっぱなしで走るオンボロの渋すぎるラットロッドなバスで、昨日のコと再会する為、麺屋(GoogleマップではNoodle Boatという高評価の店)に向かった。約束の2時になって店に入り、麺を注文したが彼女は現れなかった。本当は1時なのだが、会いたくないので2時といったのだろうか。

市場で買ったジャスミンライスと手羽元の唐揚げ4つと、残りの卵を炒め、丼にして、ケチャップをかけて食べたが、昼の満足度には到底届かなかった。一夜だけ泊まったフレンドリーなメキシコ人のラヘルと長いこと話して盛り上がり、彼はチェックアウトしていった。皆一泊だけで自分の国に帰るようだ。コロンビア人のカップルがやってきて、かなり緩くて心地良い波長を感じた。私が南米で一番行きたい国なのだ。フランス人の女性も長い旅から国へ帰る前のようだ。しかし、いつも感じるがフランス人女性は日本人女性と中身が同じだと。少しシャイで気品があってプライドが高い。オシャレ度はフランス人の方が上だが。そしてよくタバコを吸う。バンコクも肌寒くなってきて、早朝は18度だが乾燥していてもっと寒く感じる。パーカーかフリースが欲しくなったが、嵩張るのでこれ以上荷物は増やせない。山の中の瞑想寺の生活が不安だ。そしてドミ部屋の中が臭い。誰かさんが脱ぎ捨てた靴下を放置しているせいだと思われる。男子と同じ部屋は嫌だ。

ひとり旅の女性が同じ宿にもし泊まっていたら、男性はディナーに誘うのが紳士的なマナーらしい。女性は一人で安いローカル食堂に行くことができない。「行けばいいのに」と男性は思うだろうが、一人でレストランや食堂に行き、食事するのは寂しくて、可愛そうだと思われるのが嫌だし、惨めな気分になるのは男性も同じだ。他人はそんなに自分の事を見ていないのだが、気になってしまうものだ。女性が一人で外で食事するのが許されるのは、OLがランチタイムに集まるカフェや、ヘルシーで洒落た食堂だけなのだ。しかもランチタイムだけだ。あなたはディナーを一人で外食している女性を見たことが無いはずだ。そして、彼女らは他の女性を食事に誘う事はできるが、男性を誘う事はできない。他に女性がいなければ、その女性を食事に誘うのがルールであり紳士的な優しさであり

心配りのようだ。だが、鈍感な男性諸君はそんな事に気がつかない。相手の立場になればわかる事なのだが、自分に好意がある女性でないと、その女性の立場になる事をしないだろう。だから積極的な美人ではない女性は、いつも大勢誘って夕食を楽しむことができる。対して美人でプライドが高い女性は消極的なので、いつも誘われるのを待つ事になる。特にバックパッカーは美人が多いと思う。たまに美人ではない女性を見かけるが、男性が仲良くなれて誘いやすいのは美人ではない女性なのだ。

なぜ美人は消極的なのかというと、彼女らは年頃になった頃から、男性からチヤホヤされ続けてきて、質問はされる方で、する方ではなかったはずだ。食事もセックスも誘われる方であり、誘う事は無かったはずだ。それは美男子にも同じだろう。昔からモテていた美男子や男前、イケメンと呼ばれる男性は、誘われる方であって誘う事があまり無かったはずだ。美人や美男子でモテるという事は、寂しい人生を送る事になるのだ。

ここに1年以上旅してきて、明日フランスに帰るという女性が居る。彼女は綺麗な英語を話し、痩せているが美人だと思う。歳は20代後半だろうか。歳を聞くと怒りそうと思えるほど、プライドが高そうで隙がないのだ。多分彼女は自分を磨くため、自分の国で見つからない、或いはパートナーと別れた為、そして新たなパートナーを探すために旅に出たのだろう。しかし1年経ったが見つからなかった。もしかすると、彼女を昔から知っていて、慕っている男性から誘われたから帰るのかもしれない。彼女は何故こんな男性が多い、男女混合の安い部屋に泊まろうと思ったのだろうか。空港までのアクセスが良いからという理由だが、あと100円出せばもっと良い宿が見つかるはずだ。そんなに金銭的に切羽詰まっているのだろうか。だから帰るのだろうか。

まず彼女に声をかけたのは私の方からで、お互いに名前を言って握手するウエスタンなスタイルをとった。その握手の瞬間に相手と合うか合わないかを感じてしまう。握手に慣れていないアジア人に多いのが、指先だけで手のひらは合わせず力も全く入らないタイプ。欧米人でもガッチリと握手する女性はあまりいないが、スペイン人でガッチリ男らしい握手をした女性がいた。彼女は絡みつくようなコミュニケーションを取ってきて、自分に好意があるのだと勘違いしてしまう。対してフランス人は、日本人の女性のように消極的で、握手が嫌いなのか、自分に触りたくないのかと感じるほど力のない握手をする人が多い。お互い名乗った後、何日泊まるのか、どこから来てどこへ行くのか、などお決まりの質問を浴びせるが、綺麗な英語を話す美人には全く隙が無く、自分の英語が未熟だと感じてしまう。片言で照れながら恥ずかしそうに話す仕草に男性は可愛いと感じるのだが、美人である彼女らは、英語が話せないと相手に話が伝わらないから誘われないしモテない

のだと思うだろう。だから英語を嫌っているはずのフランス人の旅人は英語を勉強する。そして、私はその隙のない完璧なコミュニケーションに負けて、しかも彼女からの質問がない事で自分に興味がないと思い、閉口してしまった。彼女からすれば、何がいけなかったか全くわからないだろう。急に携帯を触りだし、話さなくなった私との無言の時間に耐えれなくなったのは当然で、ちょうど帰ってきた男前のドイツ人の所へ行った。私としてはネガティブな気分になり、「やはり男前が良いよな当然だ」とその時感じた。そして今、彼女の気持ちがわかってきたのだ。

というのも、宿には誰もいなくて彼女と二人だけの時間が続いた。お互いに気まずくなってしまい、通り過ぎざまに小さな声でハイと言うくらいの関係になった。私が市場からライスと唐揚げを買って帰ったとき、彼女はソファでスマホを触っていた。私は何も言わずにそそくさと料理を始めて、冷蔵庫の余った食材を使って作ったものを、彼女から離れたテーブルで食べた。その後、外でタバコを吸っているとフレンドリーなメキシコ人がビールを持って出てきて、話が盛り上がってきた。時間は7時を過ぎていて、話している内容は中にいる彼女に聞こえていただろう。彼女はよそ行きの格好に着替えて外に出てきた。黒い長袖のトップスには、黒いスパンコールがキラキラしていて、縁にレースがあしらってあるピンクの薄くて短い可愛いショートパンツを履いて、首にはストールをして、流行りの眼鏡をしていて、リュックをからっている。「どこに行くの?さすがフランス人だ、お洒落だ可愛い」と言ったが無視された。彼女は床に座ってタバコを吸い出し、僕たちの話に入ってきた。彼女は主にメキシコ人の彼と流暢に話し、知らない単語が多くて聞き取れなかった。話しながら時折こちらをチラッと見るのは、話をちゃんと聞いているか確認しているのだと思った。そして一頻り話すと彼女は中に戻ったのだ。一体何がしたかったのか、鈍感な私には全くわからなかったが、後になってその訳に気づいた。つまり、夕食に誘って欲しかったのだ。お洒落してきたのはそのアピールなのだが全然判らず、週末だしどこかへ友達と待ち合わせなのだろうと思った。

そのアピールだった事に気づいたのは、メキシコ人の彼が去った後だった。私はソファに座って動画を観ていると、彼女は横にある冷蔵庫からゴソゴソと何かを取り出し、料理を始めた。そして出来上がったものを離れたテーブルで食べていた。「何を作ったの?」と聞くと「スープ」とだけ答え、「フランス料理?」と聞くと「NO」とだけ言われた。「いつも自分で料理するの?」と聞くとまた「NO」とだけ言われ、機嫌が悪いのか、私のことか嫌いなのかと思い、また閉口してしまった。

いま、彼女の立場になると、夕食に誘って欲しかったのに誘われず、仕方なく暇つぶしに買ってきた食材でスープを作ったのだろう。そこへ「何作ったの?」とか「フランス料理?」とか「いつも自分で作るの?」と言われると益々イラつく事だったろう。それは私に対してではなく、素直に誘えない自分に対してイライラするのだ。空腹な彼女の不機嫌は夜中まで続き、そんな事が続いてきたので、肋骨が見えるほど痩せているのかもしれない。

という事で、女性が一人で同じドミの部屋に居たら、食事に誘いましょう。相手が誰であれ大抵は構わないでしょう。まあ、そんな可愛くない女性と食事したくないのだが。

おわり

余談

私がシャワーを浴びて洗濯をして、腰に布だけ巻いてドミ部屋に入ると、目の前のベッドの上の段で、こちらに足を向けて寝そべって映画か何かを音を大きく出して見ている彼女が居た。足がこちらに向いていて、白いTシャツ一枚しか着ていないので、股の間が見えてしまって、観てはいけない、目を逸らさなければいけないと、面倒くさい事になるので、ウエスタンの女子はちゃんと下に何か、目のやり場に困らないものを履きましょう。ドミは自分の部屋ではないのです。

あと、裸足で宿をウロつくのはやめましゃう。タイの宿はツルツルのタイル貼りが多いので裸足とタイルの気持ちよさが癖になっているのだろうけど、裸足はタイル張りの宿だけにしましょう。足の裏が真っ黒で超絶汚いです。あなた方の国で、アジア人が靴を履いたままベッドで寝るのと同じことです。

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください